2013/10/03

TRIP TO ISAN VOL.4



今回の旅行でも何度かレコード探しにまつわる面白い話があったが、紹介しきれないので一番印象的だった話を書こう。 イサーンのある町でサムローに頼んで町で一番古いCDショップに連れて行ってもらった。 どうやらリフォームしたばかりで、塗られたばかりの白い壁に最近のタイポップスの告知ポスターがタイらしくびっしり貼られている。 外観を見てこりゃ来るのが遅かったと思ったが、外の看板は当時そのままらしくかなり古い。 期待に胸躍らせながら店内へ。 店をぐるりと一周してみたがカセットとCD、DVD、VCD、そして最近やたらとリリースされている懐メロのUSBだけでレコードは見当たらない。 とりあえず奥で寝ていた若い女の店員に尋ねてみた。

「昔売っていたレコードがありませんか?」
「あるよ」
「お母さん~」

と母親を探しに店の奥へ行ってしまった。 こんなに簡単に見つかるケースは稀なのであっけにとられて待っていると、奥から店主らしきおばさんが出てくるなりレコードを20枚ほど持ってきてくれた。

「昔レコード売ってました?」
「この店はレコードを売ったことは無いよ。カセット時代にオープンしたから」
「このレコードは?」
「このレコードは昔の彼氏のものよ。ラジオDJしてたの。彼はもう死んだけど・・・」

と言われ唖然。

「思い出の品ですから買えません。どうぞ大切に持っていてください」

とすぐ返答した。おばさんは電卓を取り出しながら

「マイ・ペン・ライ(タイ語で大丈夫)、さあ会計ね」

と微笑んでいた。形見の品なのでディスカウント交渉しにくいなと考えていたら価格はきわめて平均的なレコードの値段で一安心。 会計が済むとレコードのジャケットにDJ彼氏がおばさんに向けて書いた恋文をマジックで恥ずかしそうに高速で消して袋に入れてくれた。 落書きやラジオ局の管理番号がマジックで書かれているタイのレコードは沢山持っているが、ジャケットに恋文が書いてあるレコードは今回がはじめてだ。 このレコードをDJで使うたびに電卓を持って微笑むこのおばさんオーナーを思い出すだろう。これこそインターネット・ショッピングで味わえないレコード探しの醍醐味。また思い出の1枚が加わった。