ついに究極のモーラム・コレクションが公式再発!イサーンでレコードを掘ったのも、『Trip To Isan』を執筆したのもこのアルバムを世に出すためだったのかも知れません。EM RECORDSと一緒にお仕事をするようになって、まず考えたのはタイ音楽をリリースし続ける事。
・タイ音楽をリリースし続ける。
・リスナーに歌手名、プロデューサー名を知ってもらう。
・公式ライセンスで出す。
約10年前、タイ音楽のレコードを集め出した時に疑問を感じたことが、細野晴臣やフィル・スペクターに対して、細かく調べているような音楽好きがタイ音楽になった瞬間「あのアジアな感じがいいんだよね〜」なんて語っていたことです。なんでロック、ジャズ、レゲエでは年代やレーベルなど細かく調べて語り合うのに、アジア音楽になった途端、雰囲気で聞くのだろうか?!
もし音楽ライターがビートルズのレビューで「ロンドンの霧の感じが伝わってていいよね〜」とか、スタジオ・ワンの説明文で「南国の雰囲気が漂うジャマイカの有名レーベル」なんて書いたら仕事が来なくなりますよね?アジア音楽ではそれが許されていたのです。もちろん文字の壁や情報が整理されていないのはわかります。しかし80年代、90年代のレゲエやブラジル音楽は、市場開拓の結果、リスナーが増え、レコードが運ばれ、ディスクガイドが発売され、マーケットが生まれました。
こんな状況を打開するためにはリリースし続けるしかないし、本を出版したり、トークショーを行わうなど地味な作業をしないといけないのです。近年ブートレグ再発をおこなっていた欧米のレーベルは、民族楽器を使ったバンドの新録や権利が消滅したSP音源のリリース、フィールドレコーディングやエディット加工でライセンス問題から逃げています。要は搾取できなくなったから新しいトレンドを作り出し、問題をすり替えたのです。もちろん、しっかりと人間関係を構築しているレーベルもありますが、"やり逃げ"、"ポイ捨て"されている。これが東南アジア音楽の現実です。
今回、EM RECORDSとSoi48がリリースするのはスリン先生に何回もお会いして、信頼関係を築き上げた結晶というべき究極のモーラム集。スリン先生はイサーン音楽をタイ全土でヒットさせるために歌謡曲と語り芸であるモーラムをミックスさせたルークトゥン・モーラムを生み出しましたが、今作はチャウィーワン・ダムヌーン「ナコーンパノムへようこそ」以外は混じりっ気なしの純粋なモーラム!最高のラム・プルーン集だと断言します!
今作のリリースで、タイ音楽が欧米の音楽と同様に歌手、プロデューサー、レーベル単位で語られるようになって欲しい。そしてタイ音楽好きが、当たり前のようにルークトゥンとモーラムのジャンル分け、ルークトゥン・モーラムとモーラムの違いが判別できる時代が来ることを願っています。OMK!
V.A.『スリン・パークシリの仕事2:特選モーラム集1960s-80s』
EM RECORDS / CD / EM1198CD
EM RECORDS / LP / EM1198LP
(下記公式インフォ転載)
日本に細野晴臣、ジャマイカにソニア・ポッティンジャーやハーマン・チン・ロイがいるように、タイにはスリン・パークシリがいる。彼がプロデュースした現代モーラム(*)の宝物を詰めた世界初コンピレーション。
Soi48とエムのタイ音楽アーカイブ・シリーズ立ち上げ時から目標(野望)に掲げてきたスリン・パークシリのモーラム作品集で、シリーズ中、最大ボリュームでお届けするタイ・イサーン音楽のある意味、究極的なアルバムです。
パークシリはアンカナーン・クンチャイ「イサーン・ラム・プルーン」で、タイの伝統芸能と西洋ポップスを折衷し、タイ歌謡の方向を変えてしまったゲームチェンジャー的な革命児ですが、彼の生まれ育ったタイ東北地方イサーンの伝統的語り芸、モーラムの発展には人一倍の熱意と創意でとりくみました。 本作はレコードからカセットテープへと媒体が移っていく1970年代から80年代、パークシリが手がけた現代モーラム作品をコンパイルした、タイでもいまだ編纂されていない音源集です。この曲群が長らく手付かずだった理由は、彼が独立プロデューサーだったことと、作品のほとんどが7インチ・シングル盤で流通していたことにあります。
1曲単位の制作だったシングル盤時代からカセットテープ時代に入り、フォーマット上の要請で音源をより多く供給する必要がうまれ、多くのプロデューサー達は格式ある難しいモーラムの型を崩し、芸能技術の敷居を下げて対応しました。これが80年代のモーラム・ブームを駆動させましたが、パークシリの流儀は、芸能の型は崩さないかわりにサウンド(オケ、バンド演奏)で革新を追求することにあり、新旧・有名無名のモーラム達を相手に音楽的バリエーションを生み出すことに成功。これはモノ・コードで演奏も楽器も固定され、ワンウェイになりがちな同ジャンルでは驚異的です。
今回、優雅でオーセンティックなものからラディカルな実験作まで、モーラムという伝統音楽をアヌラック・レ・パッタナー(タイ語で「保存と改革」の意)して継承した彼の手腕を聞く22曲をセレクト(デジタル版は18曲のみ)。ほとんどの曲が初再発・初CD化で一部は初レコード化となります。これまでコレクターしか耳にできなかったタイ・イサーン音楽の秘宝がここに開放されます。みなさま長らくお待たせしました。
*注釈:
モーラム:東南アジア/ラーオ系の伝統的な語り芸。モーは達人、ラムは声調に抑揚をつけながら語る芸能。つまり「語りの達人」で、その歌手と芸能の両方をさす名称。モーラムは「歌」ではない。
=作品仕様=
+ワイドケース、36頁ブックレット封入、帯付
+ 解説(日本語・英語併記):Soi48
+ 装丁デザイン:高木伸介(Soi48)
TRACKS:
1. ラムヤイ・サンカマニー「ラム・プルーン カッコイイ男」
2. ショームサワイ・セーンタウィースック「ラム・プルーン わたしを指名して下さい」
3. トーンミー・マライ「ラム・プルーン 女の子をたしなめる」
4. ゲーオター・プラヤーレー「ゲーオターのラム・プルーン」
5. チャム二ァン・ミットプラチャー「ラム・プルーン 俺とつきあって下さい」
6. チャバープライ・ ナームワイ「ラム・プルーン なだめてくれないと愛さないわ」
7. チャバープライ・ ナームワイ「ラム・プルーン サウジアラビアへの思い」
8. ソンタヤー・カラシン「 ラム・プルーン 親友と親友」(インスト)
9. ホームファン・サクサクン「ラム・プルーン 若いバツイチ男 」
10. パイリン・ポーンピブーン「ラムプルーン カティナ祭り」
11. パイリン・ポーンピブーン「パイリンのラム・タンワイ」
12. バーンイェン・スリーウォンサー「 ラム・プルーン サコンナコーン」
13. ソンタヤー・ カーラシン「ラム・タンワイ ジゴレット」
14. ソムティン・チャルーンチャイ「ラム・プルーン 民謡」
15. チャバープライ・ ナームワイ「ラム・プルーン 野外映画の物語」
16. バーンイェン・スリーウォンサー「ラム・プルーン ナコーンパノム」
17. サックチャイ・ペッチウボン「ラム・プルーン 別れの前に」
18. チャウィーワン・ダムヌーン「ナコーンパノムへようこそ」
19. カンプン・フンスック「ラム・トゥーイ 愛のラムウォン」
20. チャム二ァン・ミットプラチャー「 ラム・プルーン 森の散策の物語」
21. ナリー・ルンルアン「ラム・プルーン 愛しましょう」
22. カンプン・フンスック「ラム・トゥーイ イサーン女の約束」