映画に出演しているウボン・ラチャタニー出身のモーラム歌手チャウィーワン・ダムヌーン。彼女は伝統的なモーラムの第一人者だ。90年代に来日しており、女性モーラム歌手として初めて人間国宝にもなっている。そんな伝統、保存をアピールする彼女だが、70年代後半から80年代にかけてモーラムで稼げない時期があった。昨年のタイ・フェスティバルで来日したバーンイエン・ラーケンに自身の所属していた楽団を追われ、歌謡化が進んだイサーンの音楽シーンに取り残されたのだ。チャウィーワンは自身が弟子として育てた若いバーンイエン・ラーケンに人気を奪われ、語り芸であるモーラムはどんどん歌に変化していった。そこには金、男、スポンサー・・・日本の芸能界と変わらない裏話が存在する。
そんな時チャウィーワンはルークトゥンを歌う(※モーラムはあくまで語り芸)ことを決断する。そう、どんな手段を使っても、本来やりたくないことをしてでも彼女は食う金が必要だったのだ。チャウィーワンが歌ったルークトゥンは残念ながらヒットしなかった。当時のイサーン人リスナーが求めているような楽曲を製作しても時代は彼女を求めていなかったのだ。彼女にとって思い出したくない過去であるだろうがレコード(録音物)がそれを証明している。DJやコレクターがレコードを発掘する事で事実が明らかになったのだ。Soi48は芸能を続けるためにやりたくないこともやる姿勢、ルークトゥンを歌うチャウィーワンの歌声の魅力を評価している。今回このドキュメンタリーで人間国宝にまで上り詰めた彼女がどこまで本音を語るのか?ドロドロした歌謡界のゴシップを語ってくれるのか?要注目だ。