ワールドミュージック、辺境、ルークトゥン、アナドルロック、ボリウッド、コリウッド・・・様々な呼び名はあれど「聴いたことない音楽で仰天したい」「未知の音楽を深く知りたい」「非英語圏の高濃度灼熱グルーヴに身を任せたい」という気持ちは一緒。
大阪発全世界、最近ではタイ音楽の深淵をSOI48とのタッグで掘り続け、ヤバすぎるリリースを常に提供し続けているEM RECORDS主宰・江村幸紀!!!!!SOI48の立ち上げメンバーであり、今までSOI48のパーティにはDJ皆勤賞だったが、次回のパーティには大阪出張でやむなく欠場、最近は日本民謡DJユニット「俚謡山脈」としても活動しているムード山!!!!!和物だろうが辺境だろうがジャズでさえもガレージ耳でジャッジ、SOFT,HELL!主宰にして唯一無二のイラストレーターとしても活躍中のキングジョー!!!!!
上記3名の猛者によるズンドコFUNKY四方山(よもやま)サウンドクラッシュ!珍妙な語感とひとすじなわでいかないリズム、強烈な楽器の鳴りは人工着色の絵葉書のようなエキゾチックさとスパイシーさで聴く者の五感に作用するのです。洋楽の影響を受けたり受けなかったりしながら世界各地で独自の発展を遂げてしまった土着ダンスミュージックの異様だが癖になるグルーヴは股関節と鼓膜にべっとり絡みつき、気がつけば強い酒片手に揺れること必至の夜。
タイや民謡、インドはもちろんトルコからパキスタンまで年の功で聴かせる良い湯加減の各国音楽聴かせまっせ~!!NO CHARGEなんで酒代だけ持って遊びに来てください。
SOI48 番外編 〜ムード山はぐれ旅 辺境グルーヴを探して〜
10月24日(土) 心斎橋 コントート
https://m.facebook.com/BarContort
OPEN : 19:00-23:00
NO CHARGE
※ご来場お客様はお店にドリンクオーダーください。
■DJ
江村幸紀(EM RECORDS)
キングジョー(SOFT, HELL!)
ムード山(俚謡山脈/SOI48)
「タイ音楽はタイ音楽ですが?」
日本でジャンル名称は格別な意識はされず宣伝文句程度にしか扱われてなくて、真剣に語られることはまずない(と経験で感じる)。ましてやグローバル時代。俺の友人の織田一弘はJee Jee Bandの解説でいみじくもこう書いてくれている:
「マスメディアから流れるメッセージはいつだって「消費しろ消費しろ消費しろ」(中略)私たちはこの状況を前に耳をふさぎ、目を閉じて自分の世界に閉じこもるべきだろうか?あるいはマスカルチャーの影響の及ばない辺境へと旅にでる?いや、このシステムにおそらく「外部」は無い。ポピュラー・ミュージックももちろん例外であるはずはなく、世界各地に偏在していた民族音楽も、インナーシティの最深部にあり不可視の存在と思われたエクストリームな表現も、あるいは引きこもりのベッドルーム・ミュージックですら、ラベルを貼られ商品となり市場の内部に取り込まれてしまった。さてどうしたものか。この全員強制参加のシステムの外に身を置くことは不可能に思えてくる。」
そうなのだ。この「全員強制参加のシステム」の世に「外部」は無く、もはや辺境もない、民族音楽だって怪しいもんだ。そもそも、これらの言葉はどこの誰の目線で発せられたのだろうか。考えたことある人はえらい。まだ見込みがある。俺らは植民地時代のイギリス人に退行しているのか。アジア音楽って一体なに?大東亜共栄圏が復活したのか?しかし、そういう言葉が定着して慣れて俺もその語彙を日々使っている。どうしようもない。それくらい分かっている。大事なのはいかに消費させるかってことだってさ。オネスト・ジョンズのハワードさんはCDジャーナルの取材で「ワールドミュージックという言葉は好きじゃない」「ひとつひとつの国を真摯に受け止めて聞く姿勢が大事」みたいな発言をしていた。さすが俺の盟友ハワード。人と一度二度会っても分かるのは印象と髪型くらいでしょう。友達が100人いてもそれしか知らないなんて悲しい。こういうのをうわべの付き合いという。それよか、数は関係なく、相当に踏み込んだ危険な会話がシェアできるよな友人がいたら、俺はそういうの好きだ。
それにしても、辺境、民族音楽というのは、全員強制参加システムの世にあって、未だに音楽マニアの気持ちを妙にくすぐる語彙で、それは未知の領域に憧れる開拓者的なロマン(笑)を含むからだと思う。ところが、前述の通り、そんなロマンは実はもう空想の世界くらいにしかなく、俺は「お前が知らなかっただけ」という言葉を常に自分に投げかけるのみ。
俺はぬぐってもぬぐってもまとわりついてくるタイの音楽が大好きだ。タイの人はアジア音楽なんてこれっぽっちも考えてなくて、自分達のつくった自分達の音楽。それが最高だ。悔しいぜ!エムのシリーズでタイの作家や歌手と会い、訳詩をやりだして、やっと氷山の一角が見えた(気がしているだけかもしれないが)。Soi48の二人とはほぼ毎日タイ音楽情報のやり取りで一喜一憂している。謎の解明は次の大きな謎にふくらむ。ひとつを知ると、それまでなんとなく聞いていたCDやレコードが急に活き活きと鳴り響く。これなんですよ、音楽を聞く楽しみは。
ところで、タイで音楽話をすると「お前スラポン聞いたのか?」と地元人に一度や二度尋ねられるわけだが(これはエルビス聞いたのか?美空ひばり聞いたのか?に匹敵する問い)、最初は名前だけ一人歩きでただ古いだけで全然ピンとこなかった。それが、あれこれ関わっているうちに、突如良くなってきた。見えてきたというのが正確か。こういう体験は誰しもあるでしょう。あと、期せずしてスラポン生前発表(*)のSP盤をまとめて入手したので、今回持っていこうと思います。いいもんですよ、生のSPで聴く初期のルークトゥンは。お楽しみにー。
*スラポンは1968年にステージ上で射殺された。ルークトゥンという言葉ができた黎明期のスター歌手の死で、それ以降「ルークトゥンの王様」という永劫の称号を授けられた(<間違ってたらすいません)。死後、彼の作品が沢山出たため、生前リリース作は大きな価値がある、のだそうです。
text by 江村幸紀 (EM RECORDS)